嬉しくもない話ですが、ここに書いた懸念が当たってしまいました。
日経平均は大幅続落。
14800円の壁にまたしても跳ね返され、中国PMIのネガティブサプライズで日銀決定会合後の上げを、きれいに打ち消しました。
なんとか14500円で踏みとどまって、来週以降、もう一度上を目指す動きになることを願いますが、相場全体の弱さは隠しようもなくなっています。
すでに一部の持ち玉は処分しましたが、今年中盤以降にはビッグイベントが控えていますので、利益確定のポイントを前倒しにし、ひとまずは「まずまず」のところで満足することを考えています。
さて。
先日、内閣府の「沖縄特区」法改正(沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案)の説明に同席させていただき、唖然としたことがあります。
まあ、私達からするといつものことですが、通常言われる「国策銘柄」がいかにあやふやで怪しいものかご理解いただくためにも、ご紹介します。
今回法改正される「沖縄特区」とは、平成14年7月に我が国唯一の「金融特区」です。
他にも沖縄は、「情報通信」と「国際物流」の特区指定を受けており、設備投資などの一部に税制優遇があります。
これらによって、沖縄にはコールセンターこそ増えましたが、肝心要の「アジア太平洋の金融のハブ(中心)になる」という夢物語は、全部、絵に描いた餅となりました。
なにしろ、成功事例も何も認定事業者が、今に至るもゼロなのです。
鳴り物入りの政策が大失敗です。
そこで、今回の改正案は、これまで金融に絞られてきた業種を「どんな業種でもいい」としました。
また、業種や業者の指定を国ではなく知事ができるようにするとも言っています。
では、これで特区に進出する業者が増えるのか?投資家としては、その経済効果、波及効果も含めて気になるところです。
「新しい制度になったら沖縄に進出したいという企業さんは、どの程度いらっしゃるんですか?」
という質問に、内閣府の役人は悪びれもせず、こう答えました。
「いえ。法案が通ったら周知しますので、これからです」
「予測も見積もりもなく、法案を出したわけですね」
「まあ、そうおっしゃいますが、常時採用人数の要件が10人から5人になるなど、思い切って緩和されますので、事業者の方々は大変に進出しやすくなると思います」
確かに人数的には半分になるのですが・・・。
しかし、もともと沖縄の人件費は東京より圧倒的に安いわけです。沖縄金融特区で成功する見込みがあるなら、事業者としては10人だろうと20人だろうと沖縄で雇用して勝負をかけたいと思うはず。そうならなかった理由を、内閣府は特定できていないようです。
「今度の法改正では、金融に限らず『知事が指定する業種なら何でも』となっています。しかし、私達が企業側に聞いたところでは、水の調達が難しい場所が製造業の用地にあてがわれていたり、本格的な港の改修もないのに物流拠点を謳っていたり、とにかくちぐはぐなんです。ちゃんと政策目的に沿うように、事業者側の便宜に沿った政策パッケージを組むようなことは考えていますか」
「いえ。それは、今回の法改正とは別の内容となりますので、私どものほうではちょっと・・・」
「では、なぜ、今回の法改正はうまくいくと言えるんですか」
「今回は国ではなく、知事に指定権限を移します。地元のニーズをよく知っておられる知事さんなら、思い切っていい結果を出されるかと・・・」
だったら、最初から内閣府ではなく沖縄県に起案させろ!と突っ込みたい気持ちをぐっとこらえつつ、日本最優秀の精鋭エリート官僚ご一行様が列をなしてお帰りになるのを呆然と見送りました。
霞ヶ関の役人なんて、この程度なんです。
皆様がお勤めの会社で、需要予測も、生産見積もりもなく、ましてターゲットとする潜在顧客のリサーチすらやっていないのに、数十億、数百億円の事業を始めた人間がいたらどうなりますか?
そしてそれが、10年たっても成果ゼロという歴史的な大失態に終わったら、どうなりますか?
当たり前に考えて、役員のクビひとつやふたつでは済まないところですが、霞ヶ関では誰も責任をとらず、しれっとした顔でまた強引に別の名目で予算をぶんどってくるのです。
事業が成功したか、失敗したかではなく、予算をとってきた人間がエライ。
今回の沖縄特区はさらにウラがあります。
間もなく決まる「国家戦略特区」への沖縄認定とセットになっているのです。カジノが目玉になるという、アレです。
そして、「沖縄国家戦略特区」は、普天間移転問題で地元をなだめるためのアメです。
だいたい2千億円の真水が沖縄県にバラ撒かれます。移設先の名護市には500億円がいきます。
失敗作の「沖縄金融特区」は「経済金融活性化特区」と名前を変え、名護市を中心に集中的に私達の血税が突っ込まれます。
そのうちかなりの果実が、いろいろな経路で自民党等の有力政治家にバックする仕組はもうできていると聞きました。
3月に「国家戦略特区」が正式発表されたら、証券会社はこぞって「国策銘柄」だのなんだの言って提灯を付けてくるでしょうが、その背景にあるのはこれです。
昨日のエントリーで私は、「政治家や官僚が余計な野心を起こして市場に介入し、できもしないのにプレーヤーとして動こうとするときは要注意」と書きました。
また、「政治家や役人が個別の業界、業種のみに利益を誘導しようとする場合、たとえ証券会社が『国策銘柄だ』と提灯をつけたとしても、往々にして美味しい果実がしゃぶられた後の「カス」であり、最後にやってきた一般投資家が『ババ』をつかむ」と書きました。
その理由がこれです。
ただ、そのからくりがわかれば、コツは案外単純なものです。少なくとも、損をしない方法はわかります。
魑魅魍魎が跋扈する、というより、魑魅魍魎そのもののような政官財のトライアングルは、常に獲物として私達を狙っていますが、一般投資家は賢く振る舞って、堅実に財産を殖やしていくことに集中すれば、へんてこりんで単純な日本市場の特性を逆手にとって利益を出すことができます。
何度も繰り返しますが、負けない投資を続けていれば、誰だって遠からず巨富を掴むことができるのです。
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